製造業が狙うロングテールSEO:新規顧客を逃さないキーワード戦略

製造業が狙うロングテールSEO:新規顧客を逃さないキーワード戦略 デジタルマーケティング

製造業は展示会や対面営業が中心の印象ですが、デジタル化が進む今、実はSEO対策も成長の大きな鍵です。潜在的な顧客は検索エンジンを利用して技術情報や事例を調べ、自社サイトにたどり着くケースが増加中。本記事では、製造業が狙うべきキーワード選定から具体的な実践方法まで、わかりやすく解説します。SEOを通じて問い合わせが増えれば、売上や新規取引拡大のチャンスも広がるはずです。

なぜ製造業にSEO対策が重要なのか

コロナ禍をきっかけに進む製造業のWeb活用

ここ数年の大きな変化のひとつとして、対面での商談機会が激減したことが挙げられます。とりわけ製造業では、展示会や対面営業の場が重要な集客手段でした。しかし、コロナ禍の影響で展示会が中止・オンライン化されるなど“これまで当たり前だった販路”に大きな制限がかかりました。

一方、インターネットやSNSで情報を調べる流れは、BtoC(消費者向けビジネス)だけでなくBtoB(企業向けビジネス)の分野でも当たり前になっています。実際に「製品名や工場加工サービス」「技術の専門用語」を検索して情報を得る担当者が増え、「まずは検索エンジンから情報収集→その後に問い合わせ・見積り依頼」という購買プロセスが定着しつつあるのです。

こうした背景から、

  • 自社サイトが検索エンジンで上位に表示される
  • 見込み客(将来的に発注するかもしれない企業担当者)に“技術力”や“加工事例”を示せる

といったポイントが重要視され、SEO対策は製造業にとっても「新たな顧客開拓の要」となってきています。

広告と違い、継続的に問い合わせを呼びこみやすい

SEO対策は、“広告費”をかけずに問い合わせや集客を増やせる可能性がある点が大きなメリットです。
例えば、リスティング広告を出稿すれば「出稿している間」はサイト訪問が得やすいですが、広告の掲載を停止した途端に訪問数は落ちこんでしまいます。
一方、SEOで上位表示を獲得すれば、広告費を払い続けなくとも検索エンジンで表示される限り持続的な流入が期待できるのです。

ただし、SEOで効果を出すには時間と継続的な改善が欠かせません。更新作業をいっさい行わない放置サイトは、検索順位が変動したときに一気に落とされるリスクもあります。
それでも、正しい方針でコツコツ取り組めば、広告費用に依存しにくい“安定集客ルート”を築くことができるのです。

「顕在層」だけでなく「潜在層」にも届けられる

製造業がSEO対策を行うメリットの一つに、「まだ顕在化していない潜在ニーズをもつ担当者にも認知してもらえる」という点があります。
例えば、ある企業が

「自社工場の省人化(しょうにんか)や品質向上をめざしたいが、どんな技術や設備があるかわからない…」

と感じているとします。
このように「具体的な製品名」ではなく、

  • 「板金 自動化 メリット」
  • 「ロボット導入 失敗事例 製造業」
  • 「○○加工 効率化 比較」

など漠然と情報収集をしている段階の人たちへ、専門知識や事例、ノウハウを丁寧に記事化しておけば、「こういう技術の会社があるなら、一度問合せしてみよう」と次のアクションにつながりやすくなります。

特に製造業では導入単価も大きく、すぐ発注というよりは検討に時間を要する(数か月~1年ほどかける)傾向があります。
だからこそ、早い段階で自社の存在を知ってもらい、メルマガ登録や資料ダウンロードを通じて継続的に接点を持つ流れを作ることが、受注確率アップに効果的です。

ブランディング効果が高まる

検索結果の上位に表示されるサイトは、多くの担当者の目にとまるため「ここはなんだかすごい会社みたいだぞ」というブランディング向上にもつながります。
とくにBtoBの場合、「有名企業に採用されている実績」「独自の加工技術」「特殊素材への対応力」などが業界内で認知されるほど、発注依頼を得やすくなるでしょう。
SEO対策により検索上位を獲得することで、担当者がたまたま検索して見つけた企業であっても「専門性や実績がある会社」という印象を与えられるわけです。

製造業が狙うべきキーワードの選び方

「ビッグキーワード」「ミドルキーワード」「ロングテールキーワード」とは

SEO対策の中心となるのが「キーワード選定」です。
キーワードには大きく分けて以下の3種類があります(検索回数はあくまでイメージです):

  1. ビッグキーワード:検索回数が多い(例:「板金」「めっき」「MaaS」など)。
  2. ミドルキーワード:ビッグほど多くはないが、ある程度の回数が見込める(例:「アルミ 板金 価格」「めっき 事例」「MaaS とは」など)。
  3. ロングテールキーワード:検索回数は少ないが、複数語の組合せでニーズが絞られる(例:「ステンレス 板金 レーザー加工 短納期」「○○ めっき 構造 見直し」など)。

製造業は総じてニッチな商材や加工技術が多く、必ずしもビッグキーワードで大量アクセスを狙うよりもロングテールやミドルキーワードを固めるほうが費用対効果が高いケースが多いです。

なぜなら、製造業のBtoB取引では1件の受注単価が高い場合が多く、大きなアクセス数よりも見込み度の高い問い合わせのほうが重要だからです。
ビッグキーワード狙いだけでは、競合が非常に多く、問い合わせにつながりにくい可能性もあります。

「顕在キーワード」と「潜在キーワード」を把握する

もう一つ重要な概念が「顕在キーワード」と「潜在キーワード」です。

  • 顕在キーワード:すでに目的や課題がはっきりしている人が検索する言葉(例:「自動化 装置 見積」「○○加工 試作品 納期」など)。
    • → こういったキーワードで上位をとれれば、「すぐ問い合わせ」になりやすい
  • 潜在キーワード:まだ課題やニーズが明確でない人が検索する言葉(例:「○○加工 不良率 下げ方」「省人化 メリット 製造業」など)。
    • → まだ見積依頼などはしないが、将来の有望顧客を囲いこむチャンス

製造業の場合、導入担当者が「まさに見積を取りたい!」という顕在層ばかりではありません。
実際には「まだ課題はあるけど、どんな解決策があるのか分からない…」という潜在層が多数存在します。
そこで、潜在キーワードへの記事を作成し、自社の強みや改善事例を紹介しておけば、興味を持った担当者が「そういえば○○で検索したら、この前見つけた会社があったな」との流れで問い合わせに発展する可能性が高まるのです。

具体的なキーワード選定プロセス

以下は「製造業でSEOを始める際に役立つ具体的ステップ」です。

  1. 想定ターゲット・製品を洗い出す
    • 例:主力サービスが「高精度レーザー加工」、ターゲットは機械部品メーカー担当者 など
  2. キーワード発想ツール(例:ラッコキーワード、キーワードプランナー)を使う
    • ターゲットが使いそうな単語や関連語を検索し、どんなワードが表示されているか確認する。
  3. SEOの難易度チェック
    • ビッグ/ミドル/ロングテールのバランスや競合の強さを確認。
  4. キーワードの優先順位付け
    • 「検索ボリューム × 自社との関連度 × 問合せにつながりやすさ」を総合評価。
  5. 記事・製品ページなどで対策する
    • キーワードをタイトルや見出しに自然に入れ、狙うべき情報を網羅する。

こうしたプロセスでキーワードを選び出していきましょう。

選定キーワードに対する注意点

  • 自社に無い技術や対応外の加工をキーワード設定しても、いずれ問い合わせ対応できずにミスマッチが発生します。不要な工数とクレームの原因にもなるため、「選定キーワードと自社の業務領域」は必ず合致させることが大切です。
  • あまりにも専門用語がマニアックすぎるキーワードは、検索回数がほぼ0の可能性もあります。ビッグキーワードばかりを狙いすぎず、ロングテールへ振りきりすぎず、バランスよく攻めることが成功のコツです。

製造業がSEO対策を成功させる具体的手順

「製品ページを上位表示」するのがベストだが難易度も高い

BtoBサイトにおいて、理想は「製品(サービス)ページ」自体が上位表示されて担当者がダイレクトに製品情報を見て問合せする流れを作ることです。
例えば「プレス金型 小ロット対応」「○○めっき 試作 短納期」など、ドンピシャのキーワードで製品ページがヒットすれば、見込み度の高い問い合わせが期待できます。

ただし、競合他社が同じキーワードを狙っている場合や、そもそもその製品ページの情報が薄い場合、上位表示は難しくなります。
また、製造業サイトでは「製品の一覧ページ」があるものの、それぞれのページはほぼ仕様だけしか載っていないことも多いですよね。その状態では検索上位をとりにくいです。

「コンテンツページ」「用語集」を駆使するアプローチ

そこで近年よく行われているのが、「製品ページ+コンテンツページ(コラム記事など)+用語集」をセットで作り、検索キーワードの幅をカバーする手法です。

  • 製品ページ:できるだけSEOキーワードを意識しつつ、製品スペックや導入事例を充実させる
  • コンテンツページ:潜在層も含め広い検索キーワードを網羅する(例:「材料の違いによるめっきの強度比較」「プレスと板金の違いを徹底解説」など)
  • 用語集:専門用語を分かりやすく解説したページを多数用意し、長期的にアクセスを集める

このように複数ページでサポートしあう構成にすれば、製品ページ単独では取りにくかったキーワードでもコンテンツページ経由で興味を持たせ、最終的に製品ページへ誘導できる可能性が高まります。

効果的なコンテンツ制作のポイント

  • 一次情報・事例を入れる
    製造業の担当者が知りたいのは「実際どれくらいの精度が出るのか」「納期短縮の具体策は何か」といったリアルな話です。自社が持つ事例やノウハウを具体的に明かすと評価されやすくなります。
  • 検索意図に合った見出し設計
    「プレス金型」で調べる人の目的は? → 「部品コストを抑える方法を知りたい」「どういう流れで試作依頼ができるか知りたい」など。
    見出しをこうしたユーザーニーズに合わせて並べましょう。
  • E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を意識
    Googleは「経験や専門性のある高品質コンテンツ」を高く評価する傾向があります。プロフィール欄などで「創業○年」「大手○○社の実績」などを示すことで専門性・信頼性を高めましょう。

SEO内部対策と外部対策

コンテンツづくりとあわせて、SEOの“内部対策”と“外部対策”にも取り組む必要があります。

  • 内部対策:タイトルタグや見出し、メタディスクリプションなど、サイト内部の設定。パンくずリストの整備、URLの正規化、モバイル対応、ページ読み込み速度の最適化なども含まれます。
  • 外部対策:他サイトからのリンク(被リンク)を獲得する施策。公的機関や専門サイトが自サイトを引用してくれれば、検索エンジンからの信頼性が高まり、順位上昇に寄与します。

PDCAサイクルを回す重要性

SEOは「一度やって終わり」ではなく、継続的に改善(リライト)を行うことが前提です。
たとえば公開から数か月経った記事を見直し、「想定していたキーワードで上位に上がらない場合は、内容がずれているかもしれない」と判断。改善点をリスト化して再修正したり、関連キーワードを追加したりして品質を高めることで、次第に検索エンジンの評価が上がってくることが一般的です。

SEO対策を成果につなげるためのポイント

ホワイトペーパーやメルマガ登録の導線を作り「リード化」を目指す

製造業サイトでSEOによるアクセス数を増やすだけでは、実際の受注や取引につながるとは限りません。BtoBビジネスは購入までのハードルが高く、担当者が決定権をもたないケースも多いため、すぐに問い合わせ→即購入は難しいのです。

そこで、「資料ダウンロード」「メルマガ登録」「オンラインセミナー申し込み」など、いわゆる中間コンバージョンを用意すると効果的です。
これによって、とりあえず情報を詳しく知りたい担当者の心をつかみ、メールアドレスを取得し、将来的な商談チャンスを高められます。

  • 資料ダウンロード:技術仕様や成功事例をまとめたホワイトペーパーをPDFで用意。ダウンロードする際にメールアドレスや会社名を登録させる。
  • メルマガ登録:定期的に製品アップデート情報や業界ニュースを届けて関係を維持。
  • オンラインセミナー:製造ノウハウや改善事例をオンラインで紹介し、その場で質問・相談を受けつける。

顧客関係性を深め、最終的な受注を目指す「ナーチャリング(リード育成)」

「ナーチャリング(リード育成)」とは、集めた見込み客との関係を継続的に深めるマーケティング施策です。製造業のように大きな導入コストがかかったり、社内稟議が必要だったりするケースでは、問い合わせ~受注まで半年~1年かかることもめずらしくありません。

だからこそ、定期的なメールマガジンや製品の新情報、ウェビナー(Webセミナー)などで興味をつなぎとめ、「いざ導入を本格検討する」ときに最有力候補として思い出してもらう必要があるわけです。
つまり、SEOで集客→資料ダウンロードで連絡先を取得→継続フォロー→導入検討期に合わせて提案→受注という流れが、BtoBの代表的なパターンです。

社内の連携がSEO成功を左右する

製造業のSEO対策では、「技術」「営業」「マーケティング」の連携がとくに重要です。
たとえば、営業部門がつかんでいる顧客の生の悩みや実際に受けた質問内容は、SEOコンテンツに活かせるヒントの宝庫です。加えて、技術部門が持つ専門知識をベースに、サイト上で詳しく解説することで、ほかでは得られない独自の情報発信ができます。
マーケティング部門が中心となってSEO施策を進めても、現場の声や顧客の悩みを反映しなければ机上の空論に陥るでしょう。逆に、現場の知見をうまく取り込めば、質の高い情報が社内リソースだけでたくさん生みだせるはずです。

製造業SEOは“新しい営業ルート”を構築する鍵

ここまで見てきたように、製造業のSEO対策は製品ページの上位表示、またはコラムや事例ページを駆使し、潜在層を含めて幅広く見込み客を囲いこむ手法です。

  • 目的はアクセス数増加だけでなく、問い合わせ→受注につなげること
  • 狙うべきキーワードは“顕在”と“潜在”双方を押さえ、対策しやすいロングテールも活用する
  • 専門性・信頼性を感じられるコンテンツを増やす
  • ホワイトペーパーやセミナーなどで、中間コンバージョンを狙い、リード化→育成へ

これらを総合的に行うことで、展示会や対面営業だけに頼らない“強力な新規開拓ルート”を手にすることができます。
いま製造業にとって、SEO対策は新しい営業チャネルとしての重要性が高まっています。今後は継続的にSEO施策をチェックし、改善を積み重ねることこそが、成果(問い合わせ数アップ・受注拡大)を最大化する唯一の手段といえるでしょう。

展示会や訪問営業といった従来手段との両輪で、ぜひオンラインからの顧客獲得も加速させてみてください。

谷口藍莉

Zenken株式会社 セールスマネージャー/webマーケティングコンサル。新卒入社後1年目で最年少チームリーダー/新人賞受賞。飛び級でのマネージャー昇格後「海外人材事業」のセールスマネージャーとして参画。現在はグローバルニッチトップ事業部シニアマネージャーとして営業およびwebマーケティング/コンサルタントを担当。

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