インサイドセールスとは何か?〜製造業の現場から考える営業の新常識〜

インサイドセールスとは何か?製造業の現場から考える営業の新常識 営業戦略
  1. インサイドセールスの基本定義
  2. 製造業でインサイドセールスが注目される理由
  3. フィールドセールスとの役割分担
  4. 製造業における導入事例(要約)
  5. インサイドセールス導入のステップ〜製造業のための実践ガイド〜
  6. ステップ1:導入目的と役割の明確化
    1. 自社の営業課題を洗い出す
  7. ステップ2:シナリオ設計と運用ルールの明確化
    1. 誰に何を、どうやって届けるのか
      1. シナリオ設計の3要素
      2. フォロー時のトークスクリプト設計
  8. ステップ3:KPI(成果指標)の設定
    1. 代表的なKPI指標
  9. ステップ4:担当者のアサインと教育
    1. 少人数でのスモールスタートがおすすめ
  10. ステップ5:ツールの選定と運用体制の整備
  11. インサイドセールス運用の改善ポイント〜製造業が成果を伸ばすための6つの視点〜
  12. 1. 商談化できた/できなかった数値の把握
    1. なぜ重要か?
    2. 製造業のよくある未商談理由
    3. 改善アクション
  13. 2. 受注できた/できなかった案件の追跡
    1. なぜ重要か?
    2. よくある失注理由の例
    3. 改善アクション
  14. 3. 各プロセスの細分化によるボトルネック特定
    1. 改善例
  15. 4. 成功事例の横展開とナレッジ蓄積
    1. 製造業での活用例
    2. 推奨アクション
  16. 5. 顧客との連絡方法と頻度の最適化
    1. 製造業に多いケース
    2. 改善アクション
  17. 6. フィールドセールスとの連携強化
    1. よくある問題
    2. 改善アクション
  18. 製造業における注意点
  19. インサイドセールスの失敗事例と成功パターン〜製造業が導入で成果を出すために〜
  20. よくある失敗パターン
    1. ケース① ターゲットの誤設定で成果ゼロ
    2. ケース② フィールドセールスとの役割分担が曖昧
    3. ケース③ 外注だけに頼りすぎてノウハウが蓄積されない
  21. 成功事例から学ぶ:製造業での立ち上げ・運用の実践例
    1. 成功パターン①:社内連携型インサイドセールス構築(C社)
    2. 成功パターン②:代行支援×自社育成のハイブリッド型(D社)
  22. 3. 製造業でインサイドセールスを成功させるためのまとめ
    1. 失敗しないための5つの原則
  23. 製造業にこそインサイドセールスは強い武器になる

インサイドセールスの基本定義

インサイドセールスとは、主に電話・メール・Web会議など非対面の手段を活用し、見込み顧客との関係構築や情報収集を行う「内勤型の営業活動」です。製造業では、技術系の専門知識や製品仕様に関する深い理解が必要なため、従来は訪問営業(フィールドセールス)が主流でした。

しかし、以下のような背景からインサイドセールスの導入が進んでいます:

  • 人手不足と属人化の限界:営業担当の退職や異動で顧客対応が滞るリスク
  • 顧客接点の多様化:Web経由の資料請求や展示会後のフォローアップが重要に
  • 遠隔地・海外拠点との効率的な連携:移動コストや時間の削減ニーズ

製造業でインサイドセールスが注目される理由

  1. 長期的な関係性構築に強み
     製造業の営業では、検討期間の長いBtoB取引が多くを占めます。インサイドセールスでは、短期でのクロージングを求めず、段階的に興味喚起 → 課題把握 → 商談化と進められるため、確度の高い商談を生み出すことができます。
  2. 営業と技術の橋渡しが可能
     製品説明や仕様相談など、専門的な話が必要な場合も、事前にインサイドセールスが顧客情報を収集・整理し、技術部門や営業技術チームへ的確に橋渡しできます。
  3. 限られたリソースでの営業効率化
     営業一人あたりの訪問件数には限界がありますが、インサイドセールスなら1日に数十件以上の接触も可能。営業工数の最適配分が可能になります。

フィールドセールスとの役割分担

部門主な業務内容主な成果指標
インサイドセールス顧客育成、ニーズ把握、商談創出商談化率、架電数、顧客対応数
フィールドセールス訪問・提案・クロージング、契約交渉など成約率、受注件数、売上貢献

この分業体制により、インサイドセールスは「質の高い商談の創出」、フィールドセールスは「成約に向けた提案活動」に注力できる環境を整えることができます。

製造業における導入事例(要約)

  • A社(産業機器メーカー)
    展示会での名刺獲得後、営業フォローが追いつかず。インサイドセールス部門を立ち上げ、資料請求者・名刺交換者へのフォロー体制を整備。結果、営業活動の起点となる有効商談の数が約3倍に増加。
  • B社(化学系素材メーカー)
    テレアポから脱却し、技術営業の補助としてインサイドセールスを設置。アポイントの質が改善し、訪問営業の1回あたりの受注確度が25%向上。

インサイドセールス導入のステップ〜製造業のための実践ガイド〜

製造業における営業は、技術力を起点とした提案型が多いため、インサイドセールスを導入する際には「商材理解」や「プロセスの明確化」が特に重要です。以下では、実際に社内でインサイドセールスを導入し、機能させるための5つのステップを具体的に解説します。

ステップ1:導入目的と役割の明確化

自社の営業課題を洗い出す

まず最初にすべきは「なぜインサイドセールスが必要なのか?」を明らかにすることです。よくある製造業の営業課題には以下のようなものがあります:

  • 展示会・Web経由での問い合わせ後、放置されるリードが多い
  • 営業担当が忙しすぎて初動対応が遅れがち
  • 技術問い合わせだけで営業判断ができない案件が多い
  • 商談化の前段階での選別ができていない

これらのボトルネックを特定し、インサイドセールスの役割を次のように定めます:

  • 問い合わせ・展示会名刺などのフォローアップ
  • 初回ヒアリング〜情報整理(BANT情報の取得など)
  • 案件温度感に応じたナーチャリング(教育・育成)

ステップ2:シナリオ設計と運用ルールの明確化

誰に何を、どうやって届けるのか

製造業では、顧客の購買プロセスが長期化する傾向があるため、「シナリオ設計」が非常に重要です。

シナリオ設計の3要素

  1. アプローチ対象の明確化
     例:展示会参加者、資料請求者、過去の引き合い客
  2. フェーズ分けと条件設計
     例:「資料請求のみ」→興味フェーズ、「質問あり」→検討フェーズ
  3. 提供コンテンツと接触チャネル
     例:メールで技術資料→架電→セミナー誘導などの設計

フォロー時のトークスクリプト設計

BANT(Budget=予算、Authority=決裁者、Needs=ニーズ、Timeframe=時期)やCH(Competitor, Human resources)を含むヒアリング項目を整理。技術的要素に偏りすぎず、ビジネス観点でも商談価値を測る視点が必要です。


ステップ3:KPI(成果指標)の設定

インサイドセールスのKPI設計は「行動数」と「質の高い成果」の両輪で考える必要があります。

代表的なKPI指標

項目内容例
架電件数1日○件、週○件などの接触数目標
接続率・対話率電話のつながりや、会話できた割合
商談化率有効案件としてフィールド営業に引き渡した件数/架電数
フィードバック件数営業現場からの「案件の質」への評価件数

KPIは「リードにアプローチする行動指標」と「受注につながる成果指標」の両方でバランスよく追いましょう。


ステップ4:担当者のアサインと教育

少人数でのスモールスタートがおすすめ

製造業においては最初から大規模に始めるより、1〜3人の専任メンバーで始める方が柔軟な対応が可能です。インサイドセールス向きの人材には以下のような特徴があります:

  • ヒアリング力が高く、初対面でも信頼を得られる
  • 製品知識や導入事例に強い(営業 or 技術経験者が理想)
  • 傾聴と状況判断を両立できる(BANT条件の見極め)

外部採用ではなく、社内の営業や技術担当からの配置転換も有力な手段です。


ステップ5:ツールの選定と運用体制の整備

製造業では、顧客管理の属人化がリスクになります。そこで重要なのが以下のようなツールの導入です。

ツール名用途例
MA(マーケティングオートメーション)リードの行動分析・一斉メール送信
SFA(営業支援ツール)営業プロセスの可視化・商談管理
CRM(顧客管理)顧客情報の蓄積・分析・引き継ぎ

インサイドセールスが蓄積する「会話内容」「顧客の反応」などの情報は、営業・マーケティング・技術部門をつなぐ中核情報となります。部門を越えて使える体制づくりが求められます。


インサイドセールス運用の改善ポイント〜製造業が成果を伸ばすための6つの視点〜

インサイドセールスの体制を立ち上げた後、課題として多く挙がるのが「運用フェーズでの成果の伸び悩み」です。特に製造業では営業プロセスが複雑で、技術的な理解が必要な分、改善の打ち手も一筋縄ではいきません。

この章では、インサイドセールス運用を“より機能的にするため”の6つの改善ポイントを詳しく解説します。

1. 商談化できた/できなかった数値の把握

なぜ重要か?

KPIで「商談数」や「商談化率」を設定する企業は多いですが、重要なのは“商談にならなかった理由”の分析です。

製造業のよくある未商談理由

  • 技術的な質問だけで終わった(=営業対象ではなかった)
  • 決裁権者に接触できていない(=Authority不在)
  • 競合製品の導入が確定していた

改善アクション

  • 商談未達理由のタグ付けをシステムで徹底
  • 対話スクリプトの改善(例:「導入済み製品はありますか?」)

2. 受注できた/できなかった案件の追跡

なぜ重要か?

受注に至らなかった=「インサイドセールスでの見極めが不十分だった」可能性があります。受注結果をインサイドセールスにフィードバックする仕組みが必要です。

よくある失注理由の例

  • 誤ったニーズ判断
  • 費用感のすり合わせ不足
  • 提案タイミングのズレ

改善アクション

  • 失注理由を営業側からヒアリングし、月次で共有
  • インサイドセールスにも受注率連動KPIを設定

3. 各プロセスの細分化によるボトルネック特定

営業プロセス全体を「問い合わせ → 架電 → 接続 → ヒアリング → 商談化」と分解し、どこでつまずいているかを見極めましょう。

改善例

  • 架電後の「つながらない問題」:架電タイミングを変更(例:朝9時〜 or 夕方16時〜)
  • つながっても「会話にならない問題」:事前にMAデータや閲覧履歴を確認し、適切な話題から入る

4. 成功事例の横展開とナレッジ蓄積

「誰が、どのように成功したか」を“形式知化”して、スクリプトやテンプレートに反映します。

製造業での活用例

  • 技術資料送付後2営業日以内に架電 → アポ率が30%超
  • 展示会名刺の「役職付き」リードは、架電より先にメールでセミナー招待 → 商談率UP

推奨アクション

  • 月に1回の“成功事例共有ミーティング”の設置
  • 成功対応を録音・トーク分析して横展開

5. 顧客との連絡方法と頻度の最適化

「どのチャネルを、どのタイミングで、何回まで使うか」がインサイドセールスの成果を大きく左右します。

製造業に多いケース

  • 電話より「技術資料付きのメール」の方が応答率が高い
  • 初回架電後、1週間音沙汰ないリードには、2回目以降のフォローを手紙+電話にする

改善アクション

  • 対象別シナリオを複数パターン用意(例:リード温度別、業界別)
  • メールのタイトルや送信時間帯のABテストも実施

6. フィールドセールスとの連携強化

インサイドセールスがうまく回らない最大の原因の一つが「営業との分断」です。

よくある問題

  • 営業がインサイドセールスからの商談に“質が低い”と不満を持つ
  • トスアップ(引き渡し)基準が共有されていない

改善アクション

  • 営業と週1でレビューMTGを実施(案件のフィードバックを共有)
  • 商談評価シートを共通フォーマット化し、次回改善に活かす

製造業における注意点

  • 技術部門との連携も必須:技術的ヒアリングをする必要があるリードには、エンジニア同席の初回商談設定が効果的。
  • 複数拠点・事業部がある企業には、誰にアプローチするかの精査が不可欠:部署違いで時間を浪費しないよう「誰を狙うか」のリスト設計から見直しましょう。

インサイドセールスの失敗事例と成功パターン〜製造業が導入で成果を出すために〜

インサイドセールスは、正しく設計・運用すれば営業組織の強力な武器になります。しかし一方で、構築段階での設計ミスや運用時の見落としによって「形だけの部署」になってしまうことも少なくありません。

この章では、製造業における典型的な失敗事例とその要因を押さえつつ、成功事例から導き出される運用戦略を紹介します。

よくある失敗パターン

ケース① ターゲットの誤設定で成果ゼロ

事例:新規IT商材を扱うA社(製造業)

展示会などで獲得したリードに対し、インサイドセールスを導入。しかし、成果として得られた商談数は月に14件、架電数2000件に対してアポ率はわずか0.7%。

原因:

  • 過去の実績(紹介営業)を鵜呑みにし、ベンチャーIT企業ばかりをターゲットに設定
  • その層は実は購買力が低く、ニーズもなかった

教訓:

  • リード獲得前から「どこに需要があるか」の仮説検証が必要
  • 既存客の属性や商談履歴から再構築すべきだった

ケース② フィールドセールスとの役割分担が曖昧

事例:広告代理店B社(中堅製造業クライアントを持つ)

営業リソース不足解消のためにインサイドセールスを導入。しかし、フィールド側が「何をしてもらえるのか」を理解しておらず、逆に対応件数が増えて混乱。数ヶ月でプロジェクトが縮小。

原因:

  • トスアップ条件や業務フローが明文化されていなかった
  • 成果の定義が「アポ数」だけで、質の判断基準がない

教訓:

  • トスアップ(引き渡し)の基準をKPIベースで定義
  • フィールドセールス側と初期から共に設計・協議すべき

ケース③ 外注だけに頼りすぎてノウハウが蓄積されない

事例:BtoB機械メーカーC社

外注のインサイドセールス代行会社にすべて任せた結果、立ち上げ時こそ成果は出たが、自社で育成も改善もできず、委託終了と同時に機能不全に。

教訓:

  • 外注活用は「立ち上げ支援」「初期設計サポート」と割り切る
  • 並行して自社でのノウハウ化(教育・スクリプト設計)を進めるべき

成功事例から学ぶ:製造業での立ち上げ・運用の実践例

成功パターン①:社内連携型インサイドセールス構築(C社)

業種:産業用ソリューションメーカー

  • 営業技術チームとマーケが一体化した形でインサイドセールスを設置
  • 顧客フェーズ別にコンテンツ(事例、比較表、スペック資料)を配信
  • ヒアリング内容から営業が「案件化の確度」を事前評価

成果:

  • 商談から受注までのリードタイムが30%短縮
  • 初回訪問での技術相談数が倍増(準備済状態で訪問)

成功パターン②:代行支援×自社育成のハイブリッド型(D社)

業種:工場向け部品製造企業(Webからのリード多数)

  • 最初の3ヶ月は代行サービスでアポ獲得とスクリプト設計
  • 同時並行で社内に専任チームを立ち上げ、代行の会話録音で勉強
  • 半年後には完全内製化し、現在も2名体制で稼働中

成果:

  • 月間商談数:10→28件(過去最大)
  • インサイドセールスから営業への「トスアップ品質」にフィードバック制度を導入

3. 製造業でインサイドセールスを成功させるためのまとめ

失敗しないための5つの原則

項目ポイント
ターゲット設計顧客属性を商材別・フェーズ別に精緻化する
部門連携設計フィールド営業・マーケと共にKPI設計
スクリプト・育成体制属人化せず、仕組みとマニュアルで共有
KPI設計とPDCA量(架電・接続)と質(商談率・受注率)の両方で評価
ツール活用MA/SFA/CRMを導入してナレッジを蓄積

製造業にこそインサイドセールスは強い武器になる

インサイドセールスは単なる「内勤営業」ではなく、“戦略的に商談機会を創出する専門部隊”です。製造業のように製品開発・販売サイクルが長く、かつ技術的な接点が求められる業種にとっては、むしろフィールド営業だけで完結させるには無理があります。

営業DX・人的リソースの分散・タイミング重視の営業体制という観点からも、「受注確度の高い案件を営業へトスアップできる仕組み」こそが、次代の製造業営業の成長ドライバーとなるのです。

この記事を書いた人
遠藤純平

工業用ファスナーメーカーで製造業向けの法人営業を経験。図面を起点とした提案や現場との調整業務を通じ、製造業特有の商流や意思決定構造、現場ニーズへの理解を深める。現在はBtoB領域で製造業の集客支援に従事し、「強みはあるが問い合わせが来ない」「技術が伝わらない」といった製造業ならではの課題に対し、営業とマーケティングを融合した仕組みづくりを行なっている。

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